“Veins of Resemblance: Photography and Eugenics” - David Green

偶然見つけた、文字通り、優生学と写真の関係についての論文、1985年のThe Oxford ArtJournalに掲載。
85年にどういう文脈で議論を展開しているのかと思ったが、要は、写真的リアリズムを批判するJohn Taggによるコンテクスト重視の写真の意味決定の態度に感化されて、それを写真と科学の関係に適用しようとしているらしい。(まぁそれで選ぶのが優生学だから、ちょっと判り易すぎると思うのだが、)タッグの議論がそのまま「科学」という領野にも容易に横滑りするとは思えないし、20世紀初頭の「科学」のひとつとイメージの関係ということで読み進めてみる。

確かに、「観察」「分析」という言葉は科学(史)にそのまま接続可能なイメージに対する態度だと思うのだが、あまりにもそれだと平板すぎる。科学的知識の地位はリアルさなどのイメージの特性ではなく社会・経済・政治的コンテクストに拠るのだ、と言い切ってしまっておもしろくないのであるが、他方で、「社会的な利害=関心が知識の領域を規定する仕方とは」「誰がその真正性を正当化するのか」「特定の知識の規定に適応するとみなされる技術・方法とは何か」という問題設定は、同時代の問題として興味深い。筆者は当時の技術的問題、さらにはアマチュア写真にも言及している。