L'âme au corps : arts et sciences 1793-1993 ed. Jean Clair
1993年にGrand-Palaisで開かれた展覧会カタログ。なかなかすごくて、図版よりも論文が中心を占めている。表題どおりに、18世紀から19世紀にかけての芸術と科学の近接性がテーマ。是非、行ってみたかった。

読んだのは、Jean-Francois Debordの「芸術の解剖学から形態学へ」

著者は実際にl'école des Beaux-Arts の解剖学の先生で、18世紀末から19世紀のl'écoleの解剖学(室)の変遷が述べられている。伝記的、年代譜的なものだが、概要を理解するのに役立つ。とりわけ、1829年に学生たちの人気を得た解剖学助手Gerdy(若い彼が長には選ばれなかった結果、大規模な学生のストライキが起こったらしい)の考えを再評価したMathias Duval、Paul Richerらが、19世紀後半にどのように解剖学(形態学)を捉えていたのか。彼らはl'écoleの教授でありながら、医学のアグレガシオンを持ち(フランスでは現在でも医学免許がないと解剖はできないそう)、授業では実際に、屍体・生体・模型の三つが並べられていたようだ。特にDuvalの授業では、梯子を持参して上から見ようとした者もでるほどの盛況ぶりだった。そして、彼ら二人はやはりシャルコーの火曜講義に出席していた。

皮を剥いだ人体模型(Ecorche)の存在、表情と筋肉の関係を写真に残したことで有名なDuchenneの筋疾患の観察アルバム(1852-1856−現在にも残るデュシェンヌ型筋ジストロフィー)がl'écoleに寄贈されていたこと、などが気になる。
解剖学の歴史を権威的に教示する彼ら教授陣だが、Duvalは、アリストテレスやガレノスが動物との比較だけで実際に人間を解剖していなかったことを証明した。身体を切り開き、その構造を知ることが近代科学の印であった18−19世紀を経て、Richerは写真イメージを大々的に使い始めるのと同時に、20世紀初頭に実際の解剖をやめることとなる。