二日目。板垣鷹穂の写真批評についての発表。写真と俳諧の類似性はメディアとしてよりも、その制度的な側面に顕著だと思うが、ここでも彼のモダニズムへの態度が、プロパガンダに巻き込まれながら、捻れていく様相が浮かび上がる。リュケンさんの発表は、芸術作品の複製手段としての写真が白樺派において、模倣理論へと結びつく様子を明らかにする。白黒写真複製への熱狂は興味深いところであるが、写真と被写体との類似性と、絵画とモデルとの類似性とが並行するときに更なる摩擦が生じなかったのであろうか。坂井さんの発表は谷崎小説の写真的使用について。見合い写真の事例はおもしろい。身体と写真とのズレが欲望を先送りし続ける様子は犯罪者写真からつねに引き起こされるが、犯罪写真が写真的視線によって身体を拘束していたのに対して、見合い写真やフォトマトンなどが被写体の能動性をも含んでいる点において、写真受容の面のみならず撮影に際しての記述を聞いてみたかった。
総じて、実証的研究の根強さとイメージ理論との断絶は肌で感じた。来週は博士課程のゼミがあるので、その辺を見てこようと思う。