Direct8で、イーストウッド特集。西部劇(タイトル不明)と『ダーティー・ハリー』を見る。
西部劇は途中からしか見れず、ハリーにしても、フランス語吹き替えでほとんど言葉はわからないが、わかりやすく見れてしまうのは、どちらにしても、その古典的な手法を踏襲しているからだと思う。

警察制度に反感を抱き、上層部から睨まれつつも、無口に任務を遂行して成果をあげるハリーは、古典的な探偵(小説)を匂わせもするが、大型の拳銃を振り回し、殺し文句を吐き捨てて犯人逮捕に邁進する直情型の「悪役の正義」の原型は、このシリーズから生まれたらしい。同時に、猟奇的で倒錯的な殺人犯人像も、ここから生まれたという。どちらも、アメリカ映画における紋切り型の役柄=「人間像」として系譜化できそうであるが、それぞれの軸となるのは、何であれ個人的な「信念」であるとすれば、結局のところ、両者は鏡映しの人物像であり、それが捻れた勧善懲悪の物語機制を紡いでいる。
ところで、イーストウッドは、決して背筋を曲げない。アップの際の面長の顔の中央を走る鼻筋と同様に、走ろうが打ち合おうが周りよりも少し高い身長でつねに保たれている直立の姿勢は、やはり、丸顔でくせ毛で、背筋を曲げて足の怪我からビッコを引き続ける犯人=「スコーピオン」との対照性を際立たせている。『カンバセーション』を思わせる望遠レンズから始まるイントロと、アメリカンフットボール場での犯人追跡を望遠カメラで極端に引きながら終わらせる中盤の山場、ときおり見せる「十字架」や「法廷への階段」への仰観ショットなども示唆的。