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ここ二日、エコール・デ・ボザールの図書室にポール・リシェの資料を探りに行く。
数々の写真の現物のみならず、モデルについて書き込んだ手稿やロンドと共著で未完の『美術生理学アトラス』、ベルティヨンそっくりの人体測定カードなどを拝む。連続写真のアルバムからその断片化、編集への移行がよくわかる。1ページに十枚以上もの身体を貼り付けた彼の作業の細かさには驚かされるものの、日常の動作や古典彫刻を模した諸々のポーズに厳密な規則はなかったようだ。2枚だけ、多重露光での撮影を試みたりもしている。日によって乱雑に書き散らされた手稿など、神経質そうであり少々雑なところも伺える。
昨年の展覧会によって彼の写真の多くが公表されたようだが、目当ての彫刻に関しては資料も少ない。唯一、1912年にPierre Leprince-Ringuetという画家の水彩画展を開いたギャラリーが、なぜかリシェ博士の彫刻群を同時に展示していたことを知る。(ちなみにそのギャラリーが、馴染みの通り沿いでさらに驚く。現在はおもちゃ屋さん?)彫刻の製作中写真や彫刻群に囲まれた肖像写真をみて、フロイトのものを思い出す。この時代数多く残された他の彫刻家のものとも比べれば分かるように、何らかのコード化が働いているのだろう。
最後に、彼の彫刻作品や解剖の光景が絵葉書としても残されていた。医学・美術アカデミーの双方に在籍していた彼と大衆文化との接点だろうか。モンパルナスの消印とキャプションから1907年頃のものと分かり、宛先はリシェ自身になっていた。しかし、なかなかグロテスクな解剖の光景は、絵画にリタッチされているものの、切開された身体と驚く公衆の姿が描き出されており、当時のグラン・ギニョル趣味であれ、あまり受け取りたくはない代物である。
分かっていたものの、彼が残した写真は膨大な数に上る。ひとつひとつ丁寧にアーカイブ化したフランスの図書館システムには頭が下がるものの、全部見せてくれとも言えず、いちいち申請していては埒が明かない。ポール・リシェの名前で検索しようものなら、数々の同じタイトルがゴマンとヒットしてしまう。カタログのなかで溺れたと彼を批判したつもりが、百年経って同じことを我が身で経験したことが最大の収穫だろうか。
そういえば、当時の見世物小屋では、シャルコーやパスツールらの教授たちの名前を借りた人体不思議展を開く見世物小屋が数多くあったという。グラン・ギニョルについても、調べる必要が。
- 作者: フランソワリヴィエール,ガブリエルヴィトコップ,Fran〓@7AB7@cois Rivi`ere,Gabri`elle Wittokop,梁木靖弘
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