オルセーで開かれている展覧会、P.H.エマーソンの小写真展「Photography not art」と、JeanClair監修の「罪と罰」展へ。

前者は、ピクトリアリズム写真についての小さな展覧会。コントラストを抑えたボカし気味の風景写真と、対照的に濃淡の強い人物中心の構図において、いつもおなじ空模様や水面の反映像、葦や藁などの植物のテクスチャーが鍵となっていたことを確認する。当時の高級印刷であったヘリオグラビアの印刷技術が、オリジナルの写真とほとんど変わらないプリントであり、むしろボカシを強調するのに理想的な媒体であったことが伺える。
後者は、入念に練られたコンセプトのうえに企画されたことがわかる展覧会。キリスト教的含意から出発してギロチンを契機とした革命以前と以後という歴史的区分を導入しつつも、「マラーの死」の展示比較から高く聳え立つギロチン、ベンサムパノプティコン、数々の三面記事に犯罪人類学まで、やや盛り沢山すぎるほどであった。なかでも、ジェリコーやクレサンジェによる断片化した身体の形象や、トロップマン事件などの猟奇殺人犯の手と顔の蝋人形、デュシェンヌ=ブローニュの表情写真などに見入る。また、ベルティヨンのコーナーでは犯罪者カードアルバムや現場写真に一番の人だかりができて、皆息を呑んでいた。7月27日まで。カタログは高くて重い。
http://www.amazon.fr/Crime-ch%C3%A2timent-Jean-Clair/dp/2070128741/ref=sr_1_2?ie=UTF8&s=books&qid=1271842346&sr=8-2
ギロチンについても、読み直したくなる。

ギロチンと恐怖の幻想

ギロチンと恐怖の幻想