モバイルメディアを転換点として捉え、iphoneアプリもたくさん製作されているメディア作家の赤松正行さんのお話を聞きにこちらへ。
前回の研究会が物語や表象レヴェルにおけるマクロなレヴェルでのタイムマシン論であったとすれば、今回はモバイルメディアの実演もあり、実際の視聴覚体験や刺激反応といったミクロのレヴェルでのタイムマシン論を展開していたように思う。
やりとりのなかで、デジタルメディア以前の写真や本をもタイムマシンとして捉えることができる、といった話が出ていたが、デジタルが趨勢の現在においても「版」という活版印刷以来の概念が通用しているという時間錯誤(?)が生じているとの指摘があった。となると、最近よく見る「ver2.0」なんて言い方がどこまで的確に捉えられているのかわからないが、このような問題と関連してミリアム・ハンセンの「神経刺激」論によるベンヤミンの引用が引っかかる気がしてならないので以下メモ。

タイプライターが、いつか文士の手をペン軸と無縁なものにするとすれば、それは活版組版の精密さが、本の構想のなかに直接入ってくるようになったときであろう。おそらくそのときには、文字のかたちをもっと自由に変えることのできる、新しいシステムが必要になるだろう。そうしたシステムは、達者な手のかわりに、命令する指による神経刺激を出現させるだろう。「一方通行路」

これを単にユートピア的に読解しないためにも、赤松さんがiphoneに視覚偏重の「マルチセンサリィの欠如」を指摘されていた点が印象深い。「タッチパネル」を銘打つ商品の触覚の画一性やズレが、先の時間錯誤には絡めとられているということだろうか。静電気が足りないのか、そもそも僕の指は駅の切符売り場でも反応してもらえないことも多いのだが。

これに関連して見つけた書籍もメモ。

Toucher :Se soigner par le corps - Andrieu, Bernard

L'homme-machine et ses avatars; entre science, philosophie et littérature XVII-XXI siècles - Kunz Westerhoff, Dominique; Atallah, Marc